🎓 監修:高田真弓(CFP・1級FP技能士)

定年後の再雇用で給料はどうなる?平均年収と生活設計のコツ

「60歳で定年を迎えるけれど、その後の生活が心配…」という相談を、多くの50代の方からいただきます。特に気になるのが、定年後に再雇用制度を利用した場合の給料がどうなるのかということです。

多くの企業では、定年後に再雇用制度を導入しており、それを利用することで65歳まで働き続けることが可能です。しかし、その給料がどのように変わり、それが家計と年金にどのような影響を与えるのかについて、正確に理解している人は少ないのが現状です。

本記事では、定年後の再雇用制度の仕組み、給料の現実、そして生活設計のコツをCFPの視点から解説いたします。

この記事の結論
  • 再雇用後の給料は、定年前の50~70%程度に低下することが一般的です
  • 60~64歳の間は、再雇用給料と年金の両方を受け取ることができますが、年金が減額される可能性があります(在職老齢年金)
  • 65歳以降、基礎年金が上乗せされるため、60~64歳より収入が増える傾向にあります
  • 再雇用制度を利用するかどうかは、給料減少と精神的充足感のバランスを考慮し、個人の状況に基づいて判断することが重要です

再雇用制度とは

2006年の改正高年齢雇用安定法により、企業は定年後(通常は60歳)に本人が希望すれば、65歳までの再雇用を実施することが義務付けられています。

再雇用制度には、大きく2つのパターンがあります。

①継続雇用型

定年前と同じ企業で継続して雇用される形式です。給料体系や職務は変更されることがあります。

②転籍型

企業のグループ会社や関連企業への転籍という形で再雇用される形式です。この場合、給料や待遇が大きく変わることがあります。

多くの場合は継続雇用型となりますが、企業によって制度内容は異なりますので、人事部に確認することが肝心です。

再雇用後の給料の現実

定年後に再雇用された場合、給料がどのように変わるのかについては、多くの人が「想像以上に低下する」と驚きます。

一般的な給料の低下幅

厚生労働省と独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、定年後の再雇用給料は、定年前の給料の以下の水準になることが一般的です。

  • 基本給のみで考えると:40~60%
  • 定期昇給なし、ボーナスなし、手当の削減を考慮すると:30~50%
  • 実際の手取りベースで考えると:50~70%(社会保険料の変化を考慮)

結局のところ、定年前に月額30万円の給料をもらっていた人であれば、再雇用後は月額15~21万円程度になることが多いということです。

給料が低下する理由

①賃金体系の変更

多くの企業では、年功序列による昇給を停止し、年齢に関係なく「職務給」という形式に切り替えます。定年前は経験を積んだシニア社員として高い給料をもらっていても、再雇用後は「初心者レベルの職務」として評価され、それに見合った給料が支払われるのです。

②ボーナスと手当の廃止・削減

再雇用制度では、ボーナスが廃止されたり、大幅に削減されたりすることが一般的です。夏季休暇や通勤手当などの各種手当も削減対象となります。

③労働時間の短縮

フルタイムではなく、週4日勤務や時短勤務に変更される場合もあります。この場合、給料は勤務日数に比例して低下します。

60~64歳の間の生活設計

定年から年金受給開始(65歳)までの5年間は、家計管理が最も複雑な時期です。

この時期の収入構成

60~64歳の間は、以下の3つの収入源が存在します。

  • 再雇用給料:月額15~25万円程度(企業により異なる)
  • 雇用保険の高年齢雇用継続給付:再雇用給料が大幅に低下した場合、一定条件下で支給される給付金
  • 老齢厚生年金(報酬比例部分):60~64歳で受け取れる年金(ただし在職老齢年金で調整されることがあります)

高年齢雇用継続給付について

これは、再雇用による給料低下をサポートするための公的制度です。定年前の給料の80%未満に低下した場合、その差額の一部を雇用保険から受け取ることができます。

例えば、定年前の給料が月額30万円で、再雇用後が月額15万円になった場合、その差額(15万円)に対して、一定の割合で給付金が支給されるのが実情です。ただし、上限額が決められており、実務的には月額数万円程度の給付金になることがほとんどです。

在職老齢年金と給料の関係

60~64歳で年金を受け取りながら働く場合、「在職老齢年金」という制度が適用されます。これは、給料と年金の合計が一定額を超える場合、年金を減額する仕組みです。

在職老齢年金の計算仕組み

60~64歳の場合、給料と賞与を合算した額が月額28万円(2026年度)を超える場合、超過分の2分の1が年金から減額されます。

例を挙げます。

  • 再雇用給料:月額18万円
  • 老齢厚生年金(報酬比例部分):月額8万円

給料と年金の合計は26万円で、基準額28万円以下であるため、年金は全額受け取ることができます。

ただし、再雇用給料が月額25万円だった場合、給料と年金の合計は33万円となり、基準額を5万円超過します。この場合、超過分の2分の1である2.5万円が年金から減額され、実際の年金支給額は5.5万円になるんです。

65歳以降の変化

65歳に達すると、状況が大きく変わります。加給年金(配偶者加算)や基礎年金が加わり、年金支給額が大幅に増加する傾向にあります。同時に、給料と年金の合計に対する調整ルールが変わり、より年金が支給されやすくなります。

再雇用制度を利用すべきかの判断基準

給料が大幅に低下する再雇用制度を、本当に利用すべきかについては、単なる経済的計算だけでなく、複数の観点から判断する必要があります。

再雇用制度を利用するメリット

  • 生活費の補填:給料減少の幅が大きいにしても、完全に仕事を辞めるよりは収入が確保できます
  • 社会保険の継続:健康保険や厚生年金に加入し続けることで、社会的な保障が継続します
  • 精神的な充足感:仕事を通じた社会との繋がりや、心理的な充足感を得ることができます
  • 健康寿命の延伸:研究によると、定年後も働き続ける人の方が、引退した人より健康を維持する傾向にあります

再雇用制度を利用しないメリット

  • 時間的自由:完全に引退することで、自分の時間を有効活用できます
  • 精神的な余裕:仕事のストレスから完全に解放されることで、心身ともに休まることができます
  • 家族との時間:配偶者や孫などと過ごす時間を優先できます
健一さん
健一さん(54歳・会社員)
再雇用後の給料が月額15万円に低下することが分かりました。現在の生活費が月額35万円なので、差額の20万円をどうやって補うべきか悩んでいます。貯蓄を取り崩すしかないのでしょうか?
マユミ
マユミ(CFP・元銀行員)
重要な指摘です。確かに、再雇用給料だけでは生活費をまかなえない場合が多いです。しかし、いくつか検討すべき点があります。第一に、定年後の生活費は、現在より低下することが一般的です。通勤費がなくなり、付き合い費が減り、子どもが独立していれば食費も減ります。まずは、老後の実際の生活費を見積もることが重要です。第二に、60~64歳の5年間だけに着目するのではなく、65歳以降の年金受給を含めた全体像を見ることです。その5年間は貯蓄を取り崩しますが、それは「事前に計画された取り崩し」であり、貯蓄がそこまで持つのかを確認することが大切です。
健一さん
健一さん(54歳・会社員)
在職老齢年金について、給料が高いと年金が減額される仕組みは理解できました。であれば、わざわざ再雇用を続けるのではなく、60歳で完全に仕事を辞めて、その貯蓄で生活し、年金を全額受け取る方が良いのでは?
マユミ
マユミ(CFP・元銀行員)
これは大変良い質問です。確かに、年金が全額受け取れるなら仕事を辞めた方が得に見えるかもしれません。しかし、心理的な充足感や社会的な繋がりといった、経済的に数値化できない価値もあります。また、完全に仕事を辞めて5年間貯蓄を取り崩す戦略と、再雇用を続けながら少額の給料を得る戦略は、どちらが「家計全体として資金効率が良いか」を比較することが欠かせません。多くの場合、再雇用を利用して少なくとも給料を確保する方が、長期的には家計にプラスになるケースが多いのが実情です。

65歳までの5年間の生活設計ステップ

ステップ1:老後の実生活費を見積もる

定年前の生活費がそのまま続くと考えるのは誤りです。以下の項目について検討してください。

  • 通勤費:なくなる
  • 職場の付き合い費(飲み会など):大幅に減少
  • スーツやクリーニング代:減少
  • 食費:子どもが独立していれば減少
  • 医療費・介護費:増加傾向

実務的には、定年前の生活費の70~80%程度が、老後の生活費の目安となることが多いです。

ステップ2:再雇用給料と年金の合算で、いくらの収入が得られるかを確認する

企業から提示される再雇用給料と、ねんきん定期便に記載されている60歳からの年金予定額を合算します。在職老齢年金で減額される可能性があることを念頭に置きながら、実際に手に入る金額を計算してください。

ステップ3:毎年の資金ギャップを計算し、それを埋める貯蓄があるかを確認する

生活費が月額25万円で、再雇用給料と年金の合計が月額20万円であれば、毎月5万円の赤字が生じます。この5万円×12ヶ月=60万円を、毎年貯蓄から取り崩す必要があります。5年間で300万円の取り崩しが必要です。この金額の取り崩しに対応できる貯蓄があるかを確認することが大事なんです。

ステップ4:65歳以降の収入構成を確認する

65歳になると、基礎年金が加算され、年金支給額が大幅に増加します。この時点で、再雇用を継続するかどうか、あるいは完全に引退するかを改めて検討することができます。

再雇用制度の選択肢

再雇用制度には、複数の選択肢が用意されていることが多いです。

フルタイムでの継続雇用

定年前と同じく週5日、8時間勤務で働く形式です。給料は低下しますが、社会保険料の負担があり、実際の手取りはさらに少なくなります。

時短勤務での継続雇用

週3~4日、あるいは1日4~5時間という短い時間での勤務です。給料は低くなりますが、時間的な自由度が増し、自分のペースで働くことができます。

年間雇用契約

1年単位の契約で、年度ごとに継続を判断する仕組みです。この場合、自身の体調や家族の状況の変化に応じて、柔軟に対応することができます。

企業によって用意されている選択肢は異なりますが、「フルタイムで5年間働き続ける」という単一の選択肢だけでなく、複数の選択肢から、自身の人生設計に最適なものを選ぶことが大切です。

再雇用と個人事業化の選択肢

最近は、企業の再雇用制度を利用するのではなく、定年後に個人事業主として働く人も増えています。

例えば、これまでの職務経験を活かしたコンサルティング業務、講師業務、あるいは全く異なる事業を始めるなど、様々な選択肢があります。この場合、給料の下限がないため、自分の努力次第で再雇用制度より多くの収入を得ることも可能です。

ただし、個人事業主になると、社会保険料や税務申告の手続きが複雑になり、収入の不確実性が高まることも念頭に置く必要があります。

心理的・社会的な側面

ここまで、経済的な視点から再雇用制度について説明してきました。しかし、定年後の人生設計で同じくらい重要なのが、心理的・社会的な側面です。

仕事を通じた社会との繋がり、職場の人間関係、毎日の目的意識——これらは、給料で代替できない人生の質に関わる要素です。

給料は低下しても、週3日の時短勤務で働き続けることで、仕事の充足感を保ちながら、残りの時間を家族や趣味に費やす。あるいは、完全に引退することで、人生のリセットを図る。どちらが「正解」かは、個人の人生観に左右されるのが実情です。

次のステップ

この記事を読んだあなたへ、3つのアクション提案:

  1. 会社の再雇用制度の条件を確認する ── 人事部門に具体的な給与水準を問い合わせましょう
  2. ねんきん定期便で年金見込額を確認する(老後資金の計算方法はこちら)
  3. 60歳以降の家計シミュレーションを作る(ライフプラン表の作り方)
投資に関するリスク警告

本記事で取り扱う金融商品は元本保証のない商品です。投資判断はご自身の責任で行ってください。当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたもので、個別の投資判断を示すものではありません。重要な投資判断については、認定ファイナンシャル・プランナーなどの専門家にご相談ください。

まとめ
  • 再雇用後の給料は、定年前の50~70%程度に低下することが一般的です
  • 60~64歳は給料と年金の両方を受け取ることができますが、在職老齢年金で年金が減額される可能性があります
  • 65歳以降、基礎年金が加算されることで、収入が増加する傾向にあります
  • 再雇用制度を利用するかどうかは、経済的計算だけでなく、心理的充足感や社会的繋がりも考慮して判断することが重要です
  • 複数の選択肢(フルタイム、時短、個人事業化など)から、自身の人生設計に最適なものを選ぶことが望まれます

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参考資料

  • 厚生労働省『令和5年版労働経済白書』
  • 独立行政法人 労働政策研究・研修機構『50代の就業と収入に関する調査』
  • 日本年金機構『老齢年金ガイド』
  • 厚生労働省『雇用保険制度解説』